博物館のクラウドファンディング事例5選|標本・機械・水槽を守る支援
国立科学博物館、大和ミュージアム、南方熊楠記念館、琵琶湖博物館、マイコン博物館のクラウドファンディング事例を比較。募集終了日と支援額、資料の保全や水槽再建などへの使い道を公式報告でたどります。
執筆 ペレログ編集部

目次
国立科学博物館の標本、大和ミュージアムの大型旋盤、琵琶湖博物館の水槽。科学・産業系ミュージアムのクラウドファンディングは、展示室の外にある保管と整備の仕事も支えてきました。
博物館のクラウドファンディング5事例を、守る対象と募集後の変化から紹介します。掲載する募集はすべて終了しています。2026年9月9日に募集ページと公式報告を確認し、支援額だけでなく、資料の受け入れや修復、設備の公開までをたどりました。

国立科学博物館|9億円超の支援で標本・資料を保全
国立科学博物館は、自然史と科学技術史に関する500万点以上の標本・資料を収集、保管しています。 展示される資料は全体の一部で、多くは研究と将来の活用に備えて収蔵庫で守られています。
コロナ禍による入館料収入の減少に加え、光熱費や保存資材の高騰が続きました。 そこで2023年、「地球の宝を守れ」を掲げ、標本・資料の収集と保管を支えるクラウドファンディングを実施しました。
募集は2023年11月5日に終了し、目標1億円に対して56,584人から9億1,602万5,000円が集まりました。2025年3月の終了報告では、21件の資料の受け入れと修復・維持管理、コレクションを紹介する巡回展に活用したと説明されています。
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国立科学博物館|2025年3月の終了報告
実施主体が公表した募集・整備・支出の記録です。
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大和ミュージアムは大型旋盤を残した
広島県呉市の大和ミュージアムは、呉の歴史と造船・製鋼などの科学技術を伝える博物館です。 クラウドファンディングの対象になったのは、戦艦「大和」の主砲を製造した大型旋盤でした。
解体される可能性があった機械を取得し、輸送し、保存・展示するには大きな費用が必要でした。2021年9月30日に終了した募集には6,626人が参加し、目標4,800万円に対して2億6,948万円が寄せられました。
大型旋盤は呉へ移され、2023年3月5日に専用の展示施設で公開が始まりました。図面や写真だけではつかみにくい大きさと構造を、実物で確かめられる資料として残っています。
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大和ミュージアム|大型旋盤の保存に向けた募集
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南方熊楠記念館は研究資料を整えた
和歌山県白浜町の南方熊楠記念館は、博物学者・南方熊楠が残した資料や研究を紹介する施設です。 開館60周年へ向けた事業を進めるため、2021年に寄付を募りました。
2021年10月29日に終了した募集では、目標500万円に対し、347人から1,834万5,000円が集まりました。2022年12月の報告では、資料の保存整備や展示環境の整備に加え、目標を超えた支援を熊楠の書簡の購入、菌類・粘菌類の模型、図録制作などに充てたとしています。一部は当時まだ納入待ちだったことも記されています。
研究ノートや標本は、ただ保管するだけでは来館者へ伝わりません。 撮影、調査、解説、模型制作を重ねることで、専門的な資料が展示や図録として読める形になります。
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南方熊楠記念館|2022年12月の完了報告
実施主体が公表した募集・整備・支出の記録です。
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琵琶湖博物館には新しい水槽ができた
滋賀県立琵琶湖博物館では、2023年にビワコオオナマズ水槽が破損しました。 琵琶湖の固有種を安全に展示する場所を取り戻すため、新しい水槽の整備が進められました。
2024年8月28日~11月25日の第2弾には、のべ866人から1,773万9,702円が集まりました。目標2,000万円には届きませんでしたが、ふるさと納税型のAll-in方式で、ビワコオオナマズ水槽とコアユ水槽の再建費に充てられました。
2026年4月11日に新ビワコオオナマズ水槽と新コアユ水槽が公開されました。新水槽では、ビワコオオナマズなどを下から観察し、腹部の色や模様を比べられます。再建には、このクラウドファンディングに加え、別途の応援寄付や水槽サポーターの支援もあったと館が報告しています。
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琵琶湖博物館|2026年4月の新水槽公開
実施主体が公表した募集・整備・支出の記録です。
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マイコン博物館は青梅駅前へ移転した
マイコン博物館は、初期のパソコンやマイコン、計算機を集め、可能な限り動く状態で展示する私設博物館です。 収蔵品と活動を広げるため、青梅駅前の建物への拡張移転を計画しました。
2023年12月22日に終了した募集では、目標200万円に対して755人から1,427万6,000円が集まりました。終了報告には、展示室の内装・LED照明・通信設備・展示棚・電子工作室の空調などの支出が具体的に示されています。一方、後回しになった内装工事や、階段幅のため設置できなかった車椅子用昇降機についても説明されています。
運営する科学技術継承財団は、新しいマイコン博物館を2024年6月21日に開いたと報告しています。動く状態で残す機器の展示では、収蔵品を運ぶだけでなく、電気や空調、展示棚の整備が必要になることがわかります。
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マイコン博物館|移転費用と工事内容の終了報告
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標本、工作機械、水槽、移転へ資金が届いた
| 施設 | 主な目的 | 集まった金額 | 支援後に見えた変化 | 募集終了日 |
|---|---|---|---|---|
| 国立科学博物館 | 標本・資料の収集と保全 | 916,025,000円 | 2025年3月報告で21件の受け入れ・修復等と巡回展 | 2023年11月5日 |
| 大和ミュージアム | 大型旋盤の取得・保存 | 269,480,000円 | 専用施設で実物を公開 | 2021年9月30日 |
| 南方熊楠記念館 | 資料整備と開館60周年事業 | 18,345,000円 | 書簡購入・模型や図録制作等。2022年報告時は一部納入待ち | 2021年10月29日 |
| 滋賀県立琵琶湖博物館 | 破損した水槽の再建 | 17,739,702円 | 2026年4月に新水槽を公開 | 2024年11月25日 |
| マイコン博物館 | 施設の拡張移転 | 14,276,000円 | 青梅駅前で再開 | 2023年12月22日 |
同じクラウドファンディングでも、守る対象は標本、機械、研究資料、水槽、建物とさまざまです。 完成物に加え、整理や保存、調査のように外から見えにくい仕事にも支援が使われています。
活動報告から、保存と整備の工程が見える
募集ページには、施設が抱える課題が具体的に書かれています。 終了報告や活動報告まで読むと、保存や移転に必要な作業と、当初の計画から変わった点も分かります。
予定より完成が遅れることもあります。 その場合も、進捗や理由を伝え、完成後の公開へつなげているかを確認すると、支援が届いた過程を追えます。
支援方式と使い道を確認
目標額に届かなくても実施されますか
募集方式によって異なります。All-in方式では目標未達でも計画を実施し、All-or-Nothing方式では目標達成が実行の条件になります。募集ページの条件を確認してください。
支援金の使い道はどこで確認できますか
募集ページの活動報告や終了報告、施設の公式サイトで確認できます。工事や資料整理が長期にわたる場合は、募集終了後も報告が続くことがあります。
展示室の外にある仕事まで見届ける
大型旋盤や新しい水槽の公開は、支援の分かりやすい成果です。その背後では、標本の整理、保存環境の維持、研究資料の調査が続いています。
過去の募集ページと活動報告は、次の来館先を探す資料になります。展示を見たあとは、何を残すために資金が必要だったのかも確かめてください。
外部リンク
琵琶湖博物館|第2弾の募集結果
最終支援額・のべ寄附者数・募集方式・水槽再建への使途を公表。
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外部リンク
大和ミュージアム|大型旋盤15299機
2023年3月5日の公開開始と大型工作機械を紹介。
yamatomuseum.securesite.jp / 外部サイトへ移動します
外部リンク
科学技術継承財団|マイコン博物館
2024年6月21日の開館と機材の動態保存を紹介。
scitech.or.jp / 外部サイトへ移動します
この記事を書いた人
ペレログ編集部
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