美術館のクラウドファンディング事例5選|作品修理と寄付の使い道
東京国立博物館・徳川美術館・大原美術館・立花家史料館・諸橋近代美術館のクラウドファンディングを比較。募集終了日、支援額、作品修理や運営費への使い道を公式報告で確認し、募集後の保存活動を紹介します。
執筆 ペレログ編集部

目次
東京国立博物館の《源氏物語図屏風》には、蝶番の傷み、絵具の剥落、虫損がありました。文化財は収蔵庫に置くだけでは残らず、状態を調べ、専門家が修理し、展示できる環境を整える必要があります。
美術館・歴史系ミュージアムのクラウドファンディング5事例を、作品修理、コレクションの散逸防止、展示環境の改善という使い道から紹介します。以下の募集はすべて終了しています。2026年9月9日に公式の募集ページと活動報告を確認し、募集時の目的と、その後に報告された成果を分けて整理しました。
東京国立博物館|傷んだ《源氏物語図屏風》を次代へ
東京国立博物館が2025年に実施したプロジェクトでは、旧家で見つかった《源氏物語図屏風》の本格修理を目指しました。蝶番の傷みや絵具の剥落、虫損などがあり、作品を安全に伝えるには専門的な処置が必要な状態でした。
募集は2025年12月19日に終了し、目標3,000万円に対して3,301人から7,020万円が集まりました。寄付は屏風の修理・保存・展示のほか、収蔵文化財に関わる活動全般に充てると説明されています。
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東京国立博物館|終了した募集の公式ページ
募集の目的・終了日・最終的な支援額を確認できます。
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東京国立博物館は2026年5月、修理後の屏風を2027年1月19日~3月14日の特別展「源氏物語 王朝のかがやき」で公開する予定を発表しました。修理工程の報告も続いており、募集達成と公開の間に長い作業があることがわかります。
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東京国立博物館|修理後の屏風の公開予定
2026年5月29日発表。2027年の東京会場での公開を案内。
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この記事の5施設は「行きたい」に保存できます。訪れたらアプリでスタンプが押せます。
徳川美術館|尾張徳川家の文化財と展示活動を守る
徳川美術館は2021年、コロナ禍による来館者減少のなかで、尾張徳川家に伝わる文化財と活動継続を支えるプロジェクトを実施しました。12月17日に募集を終え、目標1,000万円に対し、2,501人から2,950万8,000円が寄せられています。
2022年10月の終了報告では、寄付を令和4年度上期までの運営費全般に充て、計画した展覧会の開催や、国宝・重要文化財を含む作品の保存・修繕に役立てたと説明しています。保存活動は修理費だけで完結せず、人員や施設を維持する費用にも支えられています。
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徳川美術館|終了した募集の公式ページ
募集の目的・終了日・最終的な支援額を確認できます。
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徳川美術館|2022年10月の終了報告
寄付を運営費や文化財の保存・修繕に充てた報告。
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大原美術館|作品との出会いを絶やさないために
大原美術館は2020年、コロナ禍での運営継続を支えるプロジェクトを実施しました。12月25日に募集を終え、目標1,000万円に対して1,707人から2,348万円が集まりました。休館や来館者減少で収入が落ち込んでも、作品の保存管理や施設の維持は止められません。
募集で訴えたのは、作品を一般に公開し、人と作品が出会う場所を維持することでした。個別の作品修理を指定する募金とは異なり、美術館を開き続ける運営を支える事例です。今回確認できた募集概要からは、寄付が個々の作品や事業へ配分された内訳までは判断できません。
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大原美術館|終了した募集の公式ページ
募集の目的・終了日・最終的な支援額を確認できます。
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立花家史料館|大名家の資料を散逸させず、まとまりで残す
福岡県柳川市の立花家史料館は、旧柳川藩主・立花家に伝来した文化財を守るため、2020年12月から2021年1月31日まで支援を募集しました。目標600万円に対し、1,242人から2,261万4,000円が集まりました。
文書、武具、調度などは、まとまりで残ることで家や地域の歴史を読み解く手がかりになります。2021年12月の終了報告では、運営を継続できただけでなく、展開することも難しかった軍旗の修復に着手できたと報告されています。散逸を防ぐ支援が、収蔵品を修復する仕事にもつながった例です。
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立花家史料館|終了した募集の公式ページ
募集の目的・終了日・最終的な支援額を確認できます。
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立花家史料館|2021年12月の終了報告
年度の運営継続と、軍旗の修復着手を報告。
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諸橋近代美術館|ダリ作品の修復と展示環境を整える
福島県北塩原村の諸橋近代美術館は2023年、サルバドール・ダリの作品などを修復するプロジェクトを実施しました。10月30日に募集を終え、目標800万円に対し、525人から2,017万5,000円が寄せられました。
2024年4月の活動報告では、修復した《キャバレーの情景》《リャネの野菜畑/庭の少女たち》が館に戻り、公開されたことを紹介しています。その後も紫外線カットフィルムの交換計画や、低反射アクリルを設置するための額装取り外し作業が報告されました。作品そのものの修復と、光などの影響を抑える展示環境づくりを組み合わせています。
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諸橋近代美術館|終了した募集の公式ページ
募集の目的・終了日・最終的な支援額を確認できます。
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さらに2026年4月の報告では、支援金の一部を空調・照明などの大型改修にも使うとしています。同館は改修に伴い長期休館しており、2027年4月中頃の再開を予定しています。来館前には、公式サイトで再開時期と展示情報を確認してください。
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諸橋近代美術館|活動報告一覧
作品修復、展示環境の整備、大型改修の経過を掲載。
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一点の修理から、コレクション全体の維持まで
| 施設 | 主なテーマ | 支援総額 | 支援者数 | 募集終了日 |
|---|---|---|---|---|
| 東京国立博物館 | 《源氏物語図屏風》の修理 | 7,020万円 | 3,301人 | 2025年12月19日 |
| 徳川美術館 | 文化財の保存・修復と活動継続 | 2,950万8,000円 | 2,501人 | 2021年12月17日 |
| 大原美術館 | 運営継続と作品の保存 | 2,348万円 | 1,707人 | 2020年12月25日 |
| 立花家史料館 | 資料の散逸防止と収蔵維持 | 2,261万4,000円 | 1,242人 | 2021年1月31日 |
| 諸橋近代美術館 | 作品修復と展示環境改善 | 2,017万5,000円 | 525人 | 2023年10月30日 |
修理報告を読むと、展示までの時間が見える
修理や保存の成果は、公式サイトの活動報告や館報から確かめられます。作品の傷み、材料の調査、修復した箇所、展示環境の改善を知ってから実物を見ると、学芸員や修理技術者の仕事にも目が向きます。支援金の集計と作業報告を併せて読むと、何に費用と時間がかかるのかを具体的にたどれます。
クラウドファンディングの終了は、保存活動の終わりではありません。支援金がどう使われ、その後どんな展示や研究につながったのかまで追うと、応援が形になる過程を実感できます。
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修理後の公開時期
修理した作品は、すぐ展示されますか?
修理後も状態確認や展示計画が必要なため、すぐ公開されるとは限りません。公開時期は施設の公式サイトや展覧会情報を確認してください。
修理後の作品と、保存の工程を見る
一点の作品修理、まとまりで残すコレクション、展示環境の改善には、それぞれ違う時間と専門技術が要ります。クラウドファンディングは、その見えにくい工程を鑑賞者へ伝える窓にもなりました。
気になる施設では、開館情報と作品の公開予定に加え、修理・保存報告も確認してください。公開された作品を見ることと、公開までの仕事を知ることが、次の保存活動への理解につながります。
この記事を書いた人
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