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企業による博物館支援の事例|寄付・技術協力など7つの方法

企業は博物館や美術館をどう支援できるのか。ブルボンの博物館サポートツール、寄付制度、飼料提供、Wi-FiやIoTの導入など国内事例から7つの方法を紹介。館の課題に合う連携と、運用を続ける手順を整理します。

執筆 ペレログ編集部

約10分で読めます公開 更新
企業による博物館支援の事例寄付・技術協力など7つの方法
目次

企業による博物館支援には、寄付や協賛、物品・人材の提供、技術を使った業務改善などがあります。展示室の照明、動物の飼料、来館者情報の集計といった日々の仕事に、自社の得意分野を役立てる方法です。

日本博物館協会の「令和6年度 日本の博物館総合調査」速報版では、各設問に回答した施設のうち「財政面で厳しい」が77.4%、「職員数が不足」が73.2%でした。いずれも「あてはまる」「まああてはまる」を合計した割合です。寄付に限らず、現場の仕事を支える協力にも必要性があります。

この記事では、社会貢献としての支援と、企業の製品・サービスを導入する事例を紹介します。すべてが無償提供や寄付による事業というわけではありません。自社の技術と館の課題を照らし合わせ、費用や役割を協議するための参考にしてください。

ブルボンが本業のDXで培った技術を、博物館へ

企業によるミュージアム支援のユニークな事例が、株式会社ブルボンの先端研究所・地域文化デジタル支援室が管理・運営する「博物館サポートツール」(外部サイト)です。社会貢献活動の一環として、「デジタル技術で日本の博物館を支援する」ことを掲げ、学芸業務と総務業務に役立つツールを提供しています。

菓子メーカーのブルボンが提供しているのは、製造現場で磨いたデータ活用の技術です。その技術を、博物館の来館者分析や事務作業の負担軽減へ応用しています。

ブルボンは2015年から工場IoTに取り組み、多様な生産設備に対応するシステムを内製してきました。オープンソースソフトウェアを活用し、生産設備からのデータ取得・集計・可視化、自動制御、AIによる不良品判定などを進めています。その過程で得た知識や技術を、文化支援として博物館に還元しているのです。

同社は、ドナルド・キーン・センター柏崎の管理・運営も支援してきました。地域文化デジタル支援室には、同館で学芸実務を担当し、来館者研究を専門とする社員が所属しています。技術と博物館実務の両方を知る人が設計に関わる点が、この取り組みの強みです。

この記事の9施設は「行きたい」に保存できます。訪れたらアプリでスタンプが押せます。

歴史

ドナルド・キーン・センター柏崎

新潟県柏崎市諏訪町10-17

開館
10:00–17:00(最終入館 16:30)

情報確認日 2026-09-12(最新の情報は公式サイトでご確認ください)

施設ページへ

提供する機能は、次のように実務に直結しています。

  • 来館者の年代、性別、居住地、グループ人数、入退館時刻などを記録し、自動で集計・可視化する「来館者分析ツール」
  • 来館者が自身のスマートフォンで利用できる簡易な音声ガイド
  • 講演会などの音声・動画から話者を分けて文字に起こし、WordファイルにまとめるAI文字起こしツール
  • PDFの結合、分割、ページ回転などを行うツール
  • 個別の学芸業務に応じた専用ツールの開発

来館者分析ツールでは、タッチパネル付きの専用機器を館に貸し出します。受付スタッフが入力した情報は、携帯電話回線を通じてクラウドへ送られ、企画展別・期間別に分析できます。音声ガイドは、館内Wi-Fi上の小型コンピューターから配信する方法と、「博物館サポートツール」のWebページから配信する方法が用意されています。

製造設備のデータを集めて改善してきた経験が、小規模館の来館者分析や業務負担の軽減に生かされています。本業の技術を別分野へ持ち込むときは、製品から考えるより、館の仕事を聞くところから始める。この事例は、その順序の大切さを示しています。

外部リンク

ブルボン|博物館サポートツール

来館者分析・音声ガイドなどと、社会貢献としての運営方針を紹介。

yoisho-museum.org / 外部サイトへ移動します

企業ができるミュージアム支援、7つのかたち

1.資金を支える

もっとも分かりやすいのは、寄付、協賛、法人会員などによる資金面の支援です。

日本科学未来館の「寄附パートナー制度」(外部サイト)は、企業や団体と協力関係をつくり、科学コミュニケーション活動や、全国の地域科学館との連携強化などにつなげる仕組みです。東京国立近代美術館の企業向け支援制度(外部サイト)では、企業名の掲出に加え、従業員向けの鑑賞機会や施設利用なども用意されています。

科学

日本科学未来館

東京都江東区青海2丁目3-6

開館
10:00–17:00(最終入館 16:30)

(最新の情報は公式サイトでご確認ください)

施設ページへ
美術

東京国立近代美術館

東京都千代田区北の丸公園3-1

施設ページへ

企業にも、顧客や従業員が文化・科学に触れる機会が生まれます。資金の受け渡しで終わらず、館との接点を社内外へ広げられる支援です。

2.物品や人の力で支える

現金以外の支援も、現場では大きな力になります。

京都市動物園の「提案型サポーター制度」(外部サイト)では、企業や団体から支援内容の提案を受け、協議したうえで実施しています。実例は、動物の飼料や剪定枝の提供、園内清掃、ワークブックの企画・編集・印刷、技術提供などさまざまです。事業用ごみ袋が1枚使われるごとに一定額を寄付する仕組みもあり、本業や日常業務と支援を結びつける工夫が見られます。

提供: 京都市オープンデータ(CC BY 4.0)
動物園

京都市動物園

京都府京都市左京区岡崎法勝寺町

施設ページへ

予算の額だけで判断せず、商品、設備、専門知識、人材のどれが館の困りごとに役立つかを棚卸しすると、連携の入口が見つかります。

3.館内の通信環境を整える

館内Wi-Fiは、来館者の通信に加え、キャッシュレス決済、デジタルチケット、音声案内、スタッフ間の連絡、センサーを動かす基盤になります。

アドベンチャーワールドの事例(外部サイト)では、屋外を含む広い園内にWi-Fi機器を導入し、来館者向けの無料Wi-Fi提供エリアと、従業員の業務利用を広げました。おたる水族館の事例(外部サイト)では、配線が難しく積雪もある屋外環境に無線ネットワークを構築しています。

動物園

アドベンチャーワールド

和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2399番地

開館
10:00–17:00

(最新の情報は公式サイトでご確認ください)

施設ページへ
水族館

おたる水族館

北海道小樽市祝津3丁目303番地

施設ページへ

広い敷地、厚い壁、水気の多い場所、文化財への配慮など、ミュージアムの通信環境には一般的なオフィスとは異なる難しさがあります。だからこそ、現地調査を行い、利用目的と運用方法から設計することが重要です。

4.IoTで日々の業務を支える

センサーと通信を組み合わせるIoTは、人手不足のなかで点検や記録を続ける助けになります。

横浜・八景島シーパラダイスでは、「ふれあいラグーン」の水処理施設にIoT角度センサーを導入し、水圧計の情報を記録・可視化しています。提供企業SIRCの取材で、担当者は点検時間が体感で約40%短くなったと説明しました。これは当該施設での評価であり、あらゆる館で同じ削減率が得られるという数値ではありません。

水族館

横浜・八景島シーパラダイス アクアリゾーツ

神奈川県横浜市金沢区八景島

施設ページへ

外部リンク

SIRC|八景島シーパラダイスの導入事例

担当者への取材に基づく、点検記録の自動化と時間削減の報告。

sirc.co.jp / 外部サイトへ移動します

水温、水質、温湿度、照度、設備の稼働状況、来館者数など、見守る対象は館種ごとに違います。最初に確かめたいのは、時間のかかる作業と、異常を知る必要がある速さです。その条件から必要なセンサーと通知方法を決めます。

5.アプリや音声案内で、鑑賞体験を深める

展示パネルに載せられる情報量には限りがあります。公式アプリや音声案内アプリなら、作品や生きものの背景、研究成果、関連映像などを、来館者の興味に合わせて届けられます。多言語化や文字サイズの調整など、アクセシビリティの向上にもつながります。

KDDIが2024年に発表したKDDI MUSEUMの実証では、位置情報を使い、展示エリアに近づくと音声解説が自動再生される仕組みが開発されました。スマートフォンを操作せず、見ている展示と解説を結びつける試みです。実証時の内容を現在の常設サービスと同一視せず、利用時は施設の案内を確認してください。

科学

KDDI MUSEUM

東京都多摩市鶴牧3-5-3 LINK FOREST 2F

開館
10:00–16:30

情報確認日 2026-09-10(最新の情報は公式サイトでご確認ください)

施設ページへ

外部リンク

KDDI MUSEUM|公式サイト

施設の展示・利用案内は公式サイトで確認できます。

www.kddi.com / 外部サイトへ移動します

外部リンク

KDDI|自動音声ガイドの実証発表

2024年の発表。位置情報と音声解説を組み合わせる試み。

newsroom.kddi.com / 外部サイトへ移動します

アプリをつくるときは、機能を増やしすぎないことも大切です。館内マップ、展示解説、イベント情報、デジタルスタンプ、プッシュ通知などから、本当に必要な機能を選び、更新を続けられる体制まで設計する必要があります。

6.展示や収蔵品の新しい届け方を共につくる

企業の技術と、ミュージアムの資料・研究・解説を組み合わせると、作品や収蔵品を伝える方法を増やせます。

国立アートリサーチセンターは、企業と国立美術館をつなぎ、専門性を組み合わせた事業をコーディネートしています。東京国立近代美術館と大日本印刷による高精細画像を使った鑑賞体験や、ベネッセコーポレーション・国立工芸館・同センターによる子ども向け鑑賞プログラムなどが紹介されています。

美術

国立工芸館

石川県金沢市出羽町3-2

開館
09:30–17:30(最終入館 17:00)
料金
入場無料

情報確認日 2026-09-10(最新の情報は公式サイトでご確認ください)

施設ページへ

外部リンク

国立工芸館|公式サイト

施設の展示・利用案内は公式サイトで確認できます。

www.momat.go.jp / 外部サイトへ移動します

外部リンク

国立アートリサーチセンター|企業と美術館の連携

企業の技術・専門性と美術館の資料を組み合わせた事業。

ncar.artmuseums.go.jp / 外部サイトへ移動します

完成品を先に持ち込まず、館が守るものと伝えたいことを起点に一緒につくる。そうすれば、イベント後も使い続けられる連携へ育てやすくなります。

7.WebサイトとSNSで、来館前後の接点をつくる

飼育員や学芸員の仕事、資料の保存修復、調査研究、企画展ができるまでの過程も、ミュージアムを知る大切な手がかりです。WebサイトやSNSは、その仕事を来館前後の人へ届けます。

ただ、WebサイトやSNSの更新は日々の業務と並行して進めるため、兼務の担当者だけでは止まりやすい仕事です。企業が取材、撮影、記事作成、投稿計画、効果測定まで分担できれば、館は無理のない頻度で発信を続けられます。

情報発信は、来館者を増やす役割と、活動への理解を深める役割を担います。来館後も研究や保存の仕事を伝えれば、寄付、会員登録、再訪など次の関わりへつながります。

支援を単発で終わらせないための4つの手順

企業とミュージアムの連携は、最初から大規模である必要はありません。次の順番で進めると、双方にとって無理のない形を探りやすくなります。

  1. 館の使命と課題を聞く 集客、業務効率化、保存環境、教育普及など、何を守り、何を改善したいのかを共有します。
  2. 小さく試す 一つの展示室でのWi-Fiやセンサー設置、期間限定の音声ガイドなど、範囲を絞って検証します。
  3. 運用する人と費用を決める 導入後の更新、問い合わせ対応、機器交換、通信費まで含めて、継続できる形を設計します。
  4. 成果を一緒に確かめる 作業時間、利用率、来館者の反応、再訪、職員の負担などを見て、改善を重ねます。

企業の宣伝を先に置くと、館の負担が増えたり、本来の使命から外れたりします。館の課題と企業の強みを同じ表に並べ、どちらが何を担うかを決めることが、続けられる連携の出発点です。

株式会社つなぐるが、ミュージアムと一緒にできること

株式会社つなぐるは、ミュージアム応援プラットフォーム「ペレログ」を企画・開発・運営しています。動物園・水族館・植物園・博物館・美術館・科学館など、館種を横断してミュージアムの活動を伝え、訪れる人との接点をつくっています。

施設向けの公式案内では、施設ページの掲載、取材記事の制作や継続的な情報発信に加え、施設固有の課題に応じた個別支援を案内しています。個別支援は対象範囲に応じた見積りとなり、機器費や工事費、通信費、保守・運用費なども含めて相談します。

  • Webサイト・EC・予約・公式LINEなど、来館前後の手続きや情報発信の整備
  • デジタルアーカイブの設計・整備
  • 来館者用・業務用・IoT用の館内通信環境の調査と設計
  • 個人を特定しない統計的な方法を原則とする、IoTによる人流把握

導入する仕組みが決まっていない段階から、課題と必要な範囲を相談できます。必要に応じて専門会社と体制を組み、導入後の運用・改善まで検討します。

支援の形は、館の仕事と企業の得意分野の組み合わせで変わります。技術や人材が日々の作業を軽くできれば、学芸員や飼育員は資料、生きもの、来館者に向き合う時間を増やせます。

企業連携やデジタル活用を考える際は、まず施設が必要とする仕事、予算、運用担当を整理してください。ペレログへの相談内容と料金・契約の区分は、施設向けの案内で確認できます。

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参考資料

  • 公益財団法人日本博物館協会「令和6年度 日本の博物館総合調査 調査結果の概要(速報版)」

外部リンク

日本博物館協会|令和6年度総合調査速報

館の運営課題など、各設問への回答を集計。

www.j-muse.or.jp / 外部サイトへ移動します

  • 大西啓「小規模博物館で活用可能な来館者基礎情報調査ツールの開発に関する実証的研究」北海道大学
  • 文化庁「ミュージアムDX実践ガイド」
  • 国立アートリサーチセンター「企業と美術館の連携」
  • 京都市動物園「提案型サポーター制度」

この記事を書いた人

ペレログ編集部

ミュージアム応援アプリ「ペレログ」を運営する、株式会社つなぐるの編集チームです。ペレログ編集部では、取材と公式発表の確認をもとに、来館のきっかけになる情報をまとめています。

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