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ミュージアムとは?博物館・美術館との違いと役割を解説

ミュージアムとは、資料や作品を集め、保存・研究し、人に伝える施設です。博物館・美術館との違い、動物園や水族館との共通点を、博物館法とICOMの定義で解説。語源や日本の施設数、学芸員の仕事も紹介します。

執筆 ペレログ編集部

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目次

ミュージアム(museum)は、博物館や美術館を指す言葉です。資料や作品を集め、保存・研究し、展示や教育を通じて人に伝える仕事を担います。ペレログでは、この仕事を共有する動物園・水族館・植物園・科学館も含めて「ミュージアム」と呼んでいます。

日常の呼び名、博物館法上の区分、ICOM(国際博物館会議)の定義は、それぞれ意味する範囲が異なります。まず違いを整理し、語源や共通する役割へとたどってみましょう。

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ミュージアム、博物館、美術館の違いを比較

呼び方・定義範囲重視する役割
ミュージアム(広い用法)博物館、美術館、動物園、水族館、植物園、科学館などを広く含む収集、保存、研究、展示、学び多様な館種の総称
博物館法上の博物館法の目的と登録制度に基づく施設資料の収集・保管・展示、調査研究、教育登録博物館
美術館美術作品を中心に扱う博物館作品の保存、研究、公開、鑑賞公立・私立の美術館
ICOMの定義世界の博物館コミュニティが共有する国際的定義包摂性、持続可能性、倫理、参加も重視各国の制度を考える参照枠
ペレログでの用法館種を越えて訪ね、応援する対象めぐる、集める、応援する動物園から美術館まで

日本語の「博物館」は、資料を保存・展示する施設の呼び名であり、博物館法で定義された用語でもあります。「ミュージアム」と呼ばれる施設が、すべて法律上の登録博物館とは限りません。

一方「美術館」は、博物館の一種です。 文部科学省の社会教育調査では「美術博物館」という区分に入り、絵画や彫刻などの美術資料を扱う館を指します。

「ミュージアム」と「博物館」が同じ意味で使われる場面もあれば、美術館や科学館などの館種を広くまとめる場面もあります。三つの言葉を常に大小の関係に当てはめるより、日常語か制度上の区分かを分けて読むと理解しやすくなります。

「美術館」という名称は、主に何を扱うかを表します。一方、登録博物館かどうかは制度上の区分です。館名だけで登録や指定の有無を判断することはできません。

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ミュージアムの語源をたどる

女神ムーサに捧げられた聖域だった

museumという英語は、ラテン語のmuseumをへて、ギリシャ語のムセイオン(mouseion)にたどりつきます。 意味は「ムーサたちの座」にあたります。

ムーサ(Muses)とは、ギリシャ神話で学芸をつかさどる9人の女神を指します。 彼女たちが受け持ったのは、叙事詩、歴史、音楽、悲劇、天文などでした。

ムーサの母は、記憶の女神ムネモシュネです。 つまりミュージアムという言葉は、その根っこに「記憶」と「学芸」を抱えているわけです。 ただ、生まれたときの意味は現代のミュージアムとはほど遠く、女神に捧げられた聖域そのものでした。

アレクサンドリアのムセイオンは研究所だった

古代の著名なムセイオンは、紀元前3世紀ごろ、エジプトのアレクサンドリアに置かれました。プトレマイオス朝のもと、図書館と結びついた学問の拠点となりました。

現代の展示施設とは異なり、学者が集まって生活し、議論や研究を行う場でした。

当時のムセイオンは、いまのミュージアムより大学や研究所に近い姿をしていました。

資料を展示して一般に見せる形が現れるのは、ずっとあとになります。1683年に開いた英オックスフォードのアシュモレアン博物館は、同館の公式紹介で、英国初の公共博物館・世界初の大学博物館と位置づけられています。

日本の博物館法が動物園を博物館と呼ぶ理由

鍵は「保管(育成を含む。)」の一言

日本の博物館法は1951年に生まれました。 その第2条第1項は、博物館をこう定めています。

「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、併せてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法による図書館を除く。)のうち、次章の規定による登録を受けたものをいう。

博物館法第2条第1項(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000285)

注目したいのは「保管(育成を含む。)」というかっこ書きです。生きた動物や植物を育てることも資料の保管に含まれます。そのため、動物園・水族館・植物園も、要件を満たして登録を受ければ博物館法上の博物館となります。

条文の末尾にある「登録を受けたものをいう」は、この法律が対象とする博物館の範囲を示す部分です。未登録の施設が、施設名として「博物館」を使えないという意味ではありません。

登録博物館、指定施設、博物館類似施設

博物館に関する制度や統計では、登録博物館、指定施設、博物館類似施設を区別します。この区分だけで展示や活動の価値に優劣がつくわけではありません。

登録博物館は、博物館法に基づく審査を受けて登録された施設です。指定施設は、博物館に相当する施設として指定された施設を指します。国や独立行政法人の施設など登録制度の対象外となる施設も含まれ、すべてが「登録要件に足りない施設」というわけではありません。2022年の法改正では、従来の「博物館相当施設」が第31条の「指定施設」として規定されました。

博物館類似施設は、登録も指定も受けず、博物館と同様の事業を行う施設として社会教育調査で集計される区分です。各地の資料館など、多くの施設がここに含まれます。

2022年の改正で加わった役割

2022年の博物館法改正は、2023年4月1日に施行されました。改正後の第3条には、資料に係る電磁的記録の作成・公開や、文化観光などを通じて地域の活力向上に寄与するよう努める規定が加わっています。

資料を集めて守るだけでなく、地域とともに動くことも役割として書き込まれたわけです。

ICOMの定義は2022年に何を書き加えたのか

まず、新しい定義を読む

博物館とは何かという問いに、世界の博物館関係者が共有する答えを出しているのが、ICOM(国際博物館会議)の定義です。

ICOMは1946年に設立された国際非政府組織で、博物館の定義や職業倫理規程づくりを担っています。 その定義は2022年8月24日、プラハで開かれた臨時総会で改定されました。 ICOM日本委員会が2023年1月に確定した日本語訳は、次のとおりです。

博物館は、有形及び無形の遺産を研究、収集、保存、解釈、展示する、社会のための非営利の常設機関である。博物館は一般に公開され、誰もが利用でき、包摂的であって、多様性と持続可能性を育む。倫理的かつ専門性をもってコミュニケーションを図り、コミュニティの参加とともに博物館は活動し、教育、愉しみ、省察と知識共有のための様々な経験を提供する。

ICOM日本委員会「新しい博物館定義、日本語訳が決定しました」(https://icomjapan.org/journal/2023/01/16/p-3188/)

2007年の定義と比べてみる

これまでの定義は2007年に決まったもので、日本語訳はこうでした。

博物館とは、社会とその発展に貢献するため、有形、無形の人類の遺産とその環境を、教育、研究、楽しみを目的として収集、保存、調査研究、普及、展示する公衆に開かれた非営利の常設機関である。

ICOM 2007年定義(日本語訳)

新しく入った言葉には、「解釈」「誰もが利用でき」「包摂的」「多様性」「持続可能性」があります。

「倫理的かつ専門性をもって」「コミュニティの参加」「省察」「知識共有」も、新しく入りました。 言葉の数だけ見ても、定義がずいぶん厚くなったのがわかります。

とくに大きいのが「コミュニティの参加」です。 2007年の定義で博物館は、遺産を集めて見せる側に立っていました。 ところが新しい定義では、地域の人びとと一緒に活動する存在として書かれています。

2007年の「その環境」という語は新定義に見られませんが、それだけで自然環境が対象から除かれたとはいえません。有形・無形の遺産という表現とともに、「持続可能性」が明記されている点にも注目したいところです。

京都での見送りから、プラハでの採択まで

2019年の京都大会では新定義案の採決が延期され、さらに議論を重ねることになりました。

その後、専門委員会ICOM Defineが4回の意見聴取を重ね、最終的に2つの案まで絞り込みます。 2022年のプラハ大会では、賛成487・反対23・棄権17という約92%の支持を得て、いまの定義が採択されました。

3年の議論を経て残ったのが、「包摂性」と「コミュニティの参加」でした。 いまの博物館が向かおうとしている方向は、ここによく表れています。

集める・守る・調べる・伝えるが共通の仕事

ミュージアムの役割は、記憶を預かること、誰でも学べる場をひらくこと、地域を支えること、生きものと自然を守ることの四つから考えられます。

社会の記憶を預かる

社会の記憶を未来へ手渡すことは、ミュージアムの重要な仕事の一つです。

土器も、絵画も、絶滅危惧種の標本も、いったん失われれば二度と戻りません。 だからこそ、集めて、守り、記録する地道な営みが要ります。 この積み重ねが、次の世代が過去にアクセスできる前提をつくっています。

誰でも学べる場をひらく

博物館は、社会教育のための機関として位置づけられています。学校の授業だけでなく、子どもも大人も自分の関心に沿って学べる場です。

たとえば、夏休みの自由研究に通う小学生も、退職後に古代史を学び直す人も、同じ展示室に立てます。 生涯学習の入り口として、ミュージアムは日々機能しています。

地域の力になる

先に触れたとおり、2022年の博物館法改正では、地域の活力を高める役割がはっきり書き込まれました。 ミュージアムはその土地の歴史や自然を語る顔になり、人を呼び、まちのアイデンティティを支えます。

郷土資料館などが集めた記録には、その土地でしか残せない歴史が含まれます。施設を維持することに加え、閉館や移転の際にも資料と記録を引き継ぐ仕組みが欠かせません。

生きものと自然を守る

動物園・水族館・植物園は、展示だけの施設ではありません。 絶滅のおそれがある種の繁殖に取り組み、野生復帰をめざし、生態の研究を積み重ねています。

飼育・栽培の記録や繁殖技術は、種の保全に役立てられます。施設や生きものによって取り組みは異なるため、展示解説や年報で、どのような研究・保全活動が行われているかを確かめると理解が深まります。

日本にミュージアムはいくつある?

文部科学省の社会教育調査は、3年に1度おこなわれています。 最新は令和6年度の調査で、2024年10月1日現在の数字です。

これによると、日本の博物館は1,346館、博物館類似施設は4,426館でした。 合わせて5,772館になります(社会教育調査 令和6年度 結果の概要(外部サイト)、確定値は2026年3月27日公表)。

この集計では登録博物館と指定施設が約23%、博物館類似施設が約77%です。登録や指定の有無にかかわらず、多様な施設が資料を守る仕事を担っています。

同じ調査の学芸員数は、博物館5,618人、博物館類似施設3,824人です。施設数で単純に割ると、それぞれ1館当たり約4.2人、約0.9人となります。ただし、これは全体の平均で、個々の館の配置人数や業務の分担を表すものではありません。

館種が違っても、残す仕事はつながっている

ICOMの定義にも博物館法にも、「絵画だけ」「標本だけ」といった線引きはありません。 集めて、守り、研究し、見せて、伝えるという営みを分かち合うかぎり、動物園も美術館も地続きの存在です。

ペレログも、動物園・水族館から美術館までを、訪ねて応援する対象として扱っています。公開中のWebサイトでは、施設の情報や記事を調べることができます。

なお施設情報の検索では、館種を10に分けて整理しています。 総合、科学、歴史、美術、動物園、水族館、植物園、動植物園、動・水・植物園、野外博物館の10区分です。 入り口として館種で絞り込めるようにしているだけで、どれかを上に置いているわけではありません。

館種が異なっても、資料や生きものを調べ、次の世代へ残す仕事には共通点があります。訪問先を探すときも、名前の違いを越えて関心を広げられます。

ペレログでできることと、準備中のアプリについては、こちらの記事で紹介しています。

展示を支える学芸員の仕事

学芸員はどんな仕事をしているのですか?

博物館法第4条第4項は、学芸員を「博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる」専門的職員と定めています。 展示の企画だけでなく、収蔵品の管理から調査研究まで担う職種です。

展示の向こうに、残す仕事がある

定義を知ると、ゾウの飼育と一枚の絵の展示が、どちらも資料を未来へ渡す仕事だと分かります。展示室で目にするのは、収集、保存、研究、教育という長い工程の一部です。

次にミュージアムへ行くときは、目の前の展示に加え、誰がどう守り、何を地域へ伝えようとしているのかも確かめてみてください。館種を越えて共通する仕事が見えてきます。

※法令・統計等は2026年9月9日に確認。施設数と学芸員数は、令和6年度社会教育調査の確定値に基づきます。

外部リンク

文化庁|法改正の概要

登録制度・指定施設・博物館の事業と連携の見直しを解説。

museum.bunka.go.jp / 外部サイトへ移動します

外部リンク

ICOM日本委員会|新しい博物館定義の日本語訳

2022年に採択された新定義の日本語確定訳を掲載。

icomjapan.org / 外部サイトへ移動します

外部リンク

ICOM UK|新しい博物館定義の採択

2022年8月24日の採択結果と新定義を紹介。

uk.icom.museum / 外部サイトへ移動します

外部リンク

文部科学省|令和6年度社会教育統計の確定値

施設数・学芸員数などの全国集計。

www.mext.go.jp / 外部サイトへ移動します

外部リンク

アシュモレアン博物館|館の歴史

1683年に公開された大学博物館の成り立ちを紹介。

www.ashmolean.org / 外部サイトへ移動します

この記事を書いた人

ペレログ編集部

ミュージアム応援アプリ「ペレログ」を運営する、株式会社つなぐるの編集チームです。ペレログ編集部では、取材と公式発表の確認をもとに、来館のきっかけになる情報をまとめています。

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